2007年03月16日
◆とにかく泣ける! 絵本
100万回生きたねこ/佐野洋子
例によってこれを立ち読みしていたある日、読み終わったまさにその時、店員さんに「こんにちは~」と声をかけられた。実はそこは仕事先で、そのくせ立ち読みしたあげく、私は半泣きだったのである。その時のいたたまれなさといったら、無かった。友人へのプレゼントのため、購入したので何とか対面は保たれたものの…。
とにかくそんな状況でも泣けるのがこの絵本というのが言いたかったので、そんな私のアホアホ話はどうでもいいとして。
この主人公の猫は、美しさにかけては右に出るものがいないほど。でもとても高慢な猫で、かつて100万回生き返り、100万人の飼い主(王様やどろぼう、女の子にいたるまで)に出会ったのに、その誰をも愛したことが無く、飼い主が非業の死を遂げても、涙1つ見せず、孤高の精神を保っていた。
ある時、猫は飼い主を持たず、野良猫になる。そんな時、白いきれいな猫に出会う。
「おれは100万回しんだんだぜ!きみはまだ1回も生きおわっていないんだろ。」
猫は言う。
「そう。」
と、白猫はそっけない。
白い猫の気を引くため、試行錯誤を繰り返した猫は、ついに
「そばにいてもいいかい」と言う。
やがて、子供にも恵まれた末、白い猫が死に、後を追うように100万回生きた猫もまた死に、生き返らなかったというところで物語りも終わりを見せる。
この終わり方の解釈にも人それぞれあるだろうが、ちょっぴり大人向けのこのキレイな話、贈り物にもうってつけ。その、プレゼントした友人もとても喜んでくれた。何かいい絵本を探している人に、まずこれをおススメしたい。
2007年03月14日
◆古きよきニッポンを感じる絵本
モチモチの木/斎藤 隆介
このブログで紹介する絵本のネタに限界が近づいた先日、わが社のスタッフの方々に、ほぼ強制的に「おススメの絵本教えて下さい!」とすがった時、皆さんおススメだったのがこの絵本だ。
最初タイトルを聞いたとき、絵のイメージとしてはほわわ~んとしたものを思い浮かべたのだったが、実際はその真逆だったもので少し驚いた。しかし、この絵が話にとてもマッチしているのである。
ここで内容に少し触れよう。
おじいさんと二人暮らしの5歳の豆太は、ひとりでトイレにも行けない臆病者。そんなおじいさんは、御年64歳にして、青獅子を追いかけて、岩から岩に飛び移るつわもの。とても豆太を可愛がっている。
タイトルにあるモチモチの木とは、豆太が名づけた家の前にある木で、豆太と来たら、夜この木を見ておびえるほどの、根っからの小心者なのである。
ある日、おじいさんが言った。
今夜は、山の神様のおまつりの日だと。モチモチの木に灯がともり、その様子はとてもきれいなのだと。その様子を見ることが出来るのは、勇気のある一人の子供だけなのだと。
自分が臆病者だということを知っていた豆太は、「おらは見れねえなあ」と、すっかりしょげかえるのである。
その夜、おじいさんが腹痛でうめき声をあげた。大好きなおじいさんの危機に、豆太は大嫌いな夜に、医者を呼びに外に駆け出した。それは怖がるのだが、おじいさんを助ける為、けなげに走りに走り、見事医者をつれて、家に帰ってくるのである。
その帰り道、モチモチの木に、火が!
その時の見開きの絵に、私は「おおー」と唸った。なるほど、作者がこの画家、滝平二郎さんに描いて欲しいと切望した気持ちがとても分かる。
絵本というのは不思議なもので、現在も数多くの新作が出版されているのにも関わらず、こうした古くからある絵本が人気だという。「これはいい絵本だ」と言ったスタッフの方が、「文章のリズムがとてもいい」と教えてくれたが、本当にその通りだ。こうした音便のよさや、おじいさんと孫のいい話というのは、現代人が書くには少し難しいのかもしれない。
ともあれ、またいい話との出会いができた。人間や、絵、景色という、日本古来の美しさを感じるこの絵本、きっとまだ何十年も読まれていくのだと思う。
2007年03月12日
◆おこさん大興奮(?)な絵本
ゴムあたまポンたろう/長新太
あたまがゴムでできているポンたろう。頭をポンとぶつけ、山を越え、バラの花園を飛び越え、ポンたろうの世界一周がはじまった!
という、類を見ないストーリーと、鮮やか過ぎる色合いに、大人と子供が受ける印象は違うかもしれません。aroha姉の友人紹介のこの絵本、aroha妹(つまり私)が最初読んだときは、「なんじゃこりゃー」と思ったものですが、読めば読むほど、ツッコミどころが満載で、結構ハマります。
どうやらお子さん方にはこの絵本が大ウケするようで、アドレナリン上昇に一役買っているようです。言ってみればブ●ース・リーや、北●の拳?
こういう、大して意味のなさげな絵本も、たまにはいいですよね。
2007年03月07日
◆今の時代だからこそ読みたい絵本
もったいないばあさん/真珠まりこ
ノーベル平和賞を受賞したケニア人女性マータイさんが打ち出した、「もったいない」が流行りだして数年。聞けば、この「もったいない」という言葉は日本独特のもので、外国にはこれに相当する言葉がないという。
倹約は美徳という意識が廃れて数年、ものを無駄に使うことをいましめ、エコロジーにようやく目覚め始めたこの時代を、まさに象徴したかのように現れたのがこの絵本だ。
日本テレビの某TO○kyoのリーダー、茂子が節約生活の企画をたまにおこなっているが、この内容はそんなもの。食べ残しや、水の流しっぱなしに対して「もったいない」と言うだけでなく、みかんの皮や、短くなった色鉛筆の活用法を、有効的に教えてくれます。
なみだを流す子供に、「もったいない」と言って、なぐさめる(?)行動や、時間が「もったいない」と言って終幕に入るオチもまたきいていて、おとなもこどももじっくり読みたくなるこの絵本。一家に一冊ほしくなる。
Posted by aroha at
12:56
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2007年03月05日
◆これぞ絵本!な絵本
スイミー/レオ・レオニ(谷川俊太郎訳)
小学生の運動会、各学年に創作ダンスというのがあって、そのとき踊った「がんばれスイミ~♪」というフレーズが、今も頭の中に残っているが、そういえば原作はあまりよく知らなかった。
ところが今になって読んでみると、心が洗われるような素晴らしい作品だと分かった。
赤い魚の群れの中、一匹だけ黒いスイミー。考えた末、スイミーが取った行動は、みんなが集まって大きな魚を作り、自分は目になるというものだった。
その、みんなで大きな魚になるという行動は覚えていたものの、そこにいたるまでのスイミーの孤独を、今回初めて感じて涙した。イヤハヤ、大人社会にも子供社会にも、また魚社会にも、同じ悲しみは存在するのである。
海の中の絵は、谷川俊太郎の訳もまた素晴らしいので、心が疲れている方にぜひおススメしたい。
ちなみに今回は、aroha姉の紹介、代筆aroha妹。
姉は、これを店頭で読んで(つまり、姉もまた立ち読みしていた。似たもの姉妹)号泣したという。
2007年02月23日
◆こどもの定番絵本
ねずみくんのチョッキ/なかえよしを
ちびくろ・さんぼと同じく、これも「思い出の絵本」に多くの人が名前を挙げる作品ではないだろうか。
新しいチョッキをみんなに自慢するねずみくん。うらやましがった友達は、こぞって着てみて、それはぞうさんにまで!
最後に、のびのびになってしまったチョッキでぶらんこをするシーンが微笑ましい。安心して子供にみせることができる、正統派の絵本といえそうだ。
ただ、ねずみくんシリーズはこの後どんどん出版され、今では膨大な量になっているらしい。
お子さんが気に入りすぎたら、ご両親は困っちゃうかも?
2007年02月14日
◆とてもいろんなことを考えさせられる絵本
おおきな木/シェル・シルバスタイン
これも人に勧められ、最近読んだ1冊だが、かなり印象に残る1冊だったので、ここに紹介する。
主人公は、“おおきな木”と、1人の少年。少年は“おおきな木”のところに毎日通っては一緒に遊んでいて、それは両者にとって、とても幸せな時間だった。
“おおきな木”は少年のことが大好きで、彼が「欲しい」と言えばなんでも与えてしまう。木の実、枝、さらには彼の成長に従って要求がエスカレートし、幹まで欲しがっても。(ちなみに少年の欲求は、お金や家という、個人的なものだった)。
やがて“おおきな木”は切り株だけになり、成長した彼は、木の所に来なくなってしまう。木は言う。
「彼に与えることが私の喜びだから、それでも私は幸せ」と。*注・英語版の私の直訳
ここで唐突に出てくる、
――でも、本当かな。
という一文が、なんとも印象的だ。
(英語版では木は“She”になっている。恋心に近かったのだろうか?)
この後、“おおきな木”と同じく、全てを失って老人になった少年が、木のところにやってきて、切り株に座り、休む場面で物語りは終わる。とてもシンプルな絵と文だが、下手な社会派小説より、よほど色んなことを考えさせられる本だ。
だから、子供よりむしろ大人にこそ読んで欲しい1冊だ。尚、原題は“The Giving Tree”という。「寛大な木」という訳よりも、そのまんま「与える木」の方がふさわしい気がする。
2007年02月07日
◆旅行のお供にしたい本
旅の指さし会話帳〈11〉ベトナム―ここ以外のどこかへ!/池田 浩明
こういうのを絵本として紹介するのもどうかと思うが、昨日の流れでいっちゃう。
海外旅行に行く時、せっかくだからと現地の言葉の練習本として、こういう会話の本を持って行き、結局使わなかったこと、あるでしょう(私はある)。その原因は、いつ活用したらいいか分からないからというものではないだろうか。
この本、使用目的に分かれて絵と言葉で解説してあるので、非常に分かりやすい。昨年ベトナム旅行に行った時、現地ツアーでいっしょになった一人旅の日本人の方が、これを持って現地のオトコマエボーイとコミュニケーションを取っていて、非常にうらやましかったのを覚えている。
ベトナム語の発音は、フランス語と合わせてもっとも日本語から遠いと言われていて、とにかく発音が難しい。しかしこれだと、絵を指させば分かってくれるので、そんな問題も解消されるということだ。
あまり置いている書店が少ないので、ちょっと試し読み(立ち読みとも言う)するには難しいかもしれないが、現地の方と濃密なコミュニケーションが可能となるので、海外旅行に行く時には、ぜひ携行をおすすめする。
このベトナム語ガイドのほかにも、アジア、ヨーロッパ各国用の本が出ている。なお、このベトナム語の作者は、『さおだけ屋はなぜつぶれないのか』で知られる作者だ。とっても多才。
2007年02月06日
◆あなどれない活用絵本
Elmer's Friends / David McKee
突然だが、私は数年前から英会話教室に通っている。
この洋書は、そのずっと前に購入し、当時はただこの本が可愛かったから(だって、モザイクの象さんですよ!)買っただけで、中身を読む気など全くしなかったものだ。
私が英会話に通うようになったキッカケは、初めて行った海外旅行、ベトナムの地で、老若男女、観光地の人全てが英語(日本語がしゃべれる人も多い)をしゃべれ、大きな敗北感を味わって帰ってきたからであった。
その後、英語を習い始めて数ヶ月。やっとこの本を読む時がやってきたというわけである。
私は、はっきり言って学校の授業英語は嫌いであった。でも、こういう英語で絵本を読むのはけっこう楽しいし、思いもよらない言い回しが出てくることもある。子供向けの文章であるために、難しい文法などはまず出てこないので、分かりやすい。
なので、外国語を勉強するのに、その国の言葉で書かれた絵本を読むことは、いい勉強にもなるし、現地の言葉だから、より一層表現が伝わるものだ。絵本をこういう形で取り入れるのも、いいものである。
2007年01月29日
◆ついつい食べたくなる絵本
「ちびくろ・さんぼ」/ヘレン・バンナーマン
これもまた定番中の定番ではあったものの、人種差別につながるとされ、長い間絶版になっていた作品だ。個人的な意見としては、差別の要因は見つからないと思うが、今回はそれが目的ではないので、その話題はこれで終了。
私は、今でこそこんなブログを開設しているものの、子供の頃、あまり絵本に接する機会が多かったわけでもない。従って、今の年齢になってこれを読んだのだが、それでもスゴイ本だと思う。多くの方々が、「色んな絵本を読んでもらったけど、全部内容忘れちゃった」と言った中で、「これだけは覚えている」と言うだけはある。
だってですよ、トラがですよ、バターになってですよ、ホットケーキにのせるのですよ(笑)。
この大胆な発想は、わが国が誇る浦島太郎に匹敵するインパクトではなかろうか。
ちなみに、絵本やアニメに出てくる、“一度食べてみたいものmyベスト3”は、
1「ちびくろ・さんぼ」の ホットケーキ
2「アルプスの少女ハイジ」の チーズのせパン
3「ルパン3世カリオストロの城」の 山盛りスパゲティ
だ。
……お腹すいた。
2007年01月25日
◆何10年先まで残したい絵本
もこ もこ もこ / 谷川 俊太郎
一度聞いたら忘れられないこのタイトル。
“思い出に残る1冊の絵本”というのは誰にでもありそうなものだが、これを挙げる人も多いのでは?
とにかくシンプルな内容だ。「もこ」と、地上から出てきた“何か”。それが、「もこもこもこ」と成長し、「ぱあん」とはじけ、また「もこ」と最初に戻る(ほら、もう終わった〈笑〉)。つまりエンドレスに楽しめる。
初版が発表されたのはもう20年以上も前になるようだが、今でも小さい子供、大興奮の絵本らしい。
この、シンプルすぎる文と絵に、子供の頃(と、言っても小学生時代だ)はただただ大笑いしていたばかりだったが、ひょっとするとここには、作者の深い真理が隠されているかもしれない(いや、いないか?)し、そんなことを想像するのも楽しい。
あまりにも単純でインパクトのあるこれは、何10年先まで語り継がれるにふさわしい1冊だと思うが、どうだろう。
2007年01月24日
◆全員がはまった伝説の絵本
「おまえうまそうだな」/作みやにしたつや
最初の紹介はぜひこれにしたかった。
絵本にあるまじきタイトルと思わないで(いや、思って?)欲しい。
一度ご覧になっていただければ分かると思うが、絵が結構どぎついので、絵本の絵には、ファンタジックなものを求める人は、あやうく素通りされかねないものだ。
が、それはあまりにももったいない。友人知人、8名(中途はんぱやな…)にこの絵本を教えたところ、全員がはまり、その内の1人、小学校教師は、現在高学年を受け持っているくせに、来年は低学年を受け持つことになるはずだからと(もちろんそんなこと決まっていない)、パペットまで買い求めたという、私たちの間では伝説になっている作品なのである。
最初にこれをすすめられたのは、グラフィックデザイナーの私の姉(つまりまるがお姉)からで、初めてこれを店頭で見た時は、私も「え、これ?」と戸惑って、あまり読む気がしなかったものだ。
しかし、読んでいく内に、この世界にすっかりはまりこんだ私は、なんと店先(つまり立ち読みしていた。ちゃんと買おう)で、マジ泣き寸前まで行った。とてもマニアックな話になるが、手塚治虫さんの「ブラック・ジャック」で、誘拐犯と子供のこんな話があったなあと思う。
話の内容をここで語るには、読むときの楽しみが半減するので差し控えたい。だが、けっこう本の虫の私が、昨年読んだ名だたる名作家を差し置いて、『My Book Of The Year』に輝いたのが、この作品だ。
この作者は、この「ティラノサウルスシリーズ」(そう、この絵はティラノサウルスなんです)のほかにも、「おとうさんはウルトラマン」シリーズで数多くの作品を発表されているので、そちらもご一読をおすすめする。
2007年01月22日
◆たかが絵本、されど絵本
絵本との出逢いは、あるテレビで流された一冊の本がきっかけだった。
『不思議の国のアリス』をポップアットアートで表現したその本は、まさに衝撃的の一言だった。
ロバート・サブタという、その世界では第一人者の絵本。少ないページの中に、小さくて大きな芸術が展開されていた。
子供の頃、絵本を読み語りされた人も多いと思うが、私はあまりそういう記憶が無い。だからかもしれないが、本は読んでも絵本には手も触れないという性格だったが、それ以来、ポップアップ絵本以外の絵本の世界に、私はのめりこんで言った。
たかが絵本、されど絵本。
絵本の世界には、子供だけでなく、大人も感動できる世界がある。現に、友人の子供の誕生日祝いに絵本を贈ると、子供ではなくその親が喜んだ。
そんな絵本初心者の私が、これからおススメの本を紹介していくので、よろしくお付き合い願いたい。